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スペイン世紀末珍道中記 2000.12 記:カロリーナ坂本

■ 3-2

 「パタータ!(ジャガイモの事)」が写真を撮る合図。
 「はい、チーズ」のようなもので、カメラを指差し「バレー?(OK?)」と聞くと、「いいよ」と言う人が意外と多かったのはビックリ!
 向うからすれば訳もわからない東洋人の私によく撮らせてくれたな。スペイン人って懐が大きいなあ!
 「撮っちゃ駄目」って言う人も「どっから来たの」と話しかけてくれたりして嬉しかったけど、言葉が出てこない自分がちょっともどかしい。あー、もっとしゃべれたらなあ、まったく!

 グラナダには3日間滞在して、フラメンコを見に行ったり、治安の悪い一角だから絶対行く事ができないと諦めていたアルハンブラ宮殿の夜景が綺麗な教会に連れていってもらったり、会員制クラブに連れていってもらったり、美味しいディナーに呼んでもらったりと、普通の旅では経験できない事もいろいろ出来て、ほんとにエミリオには感謝、感謝、非常感謝!
 だから別れの朝、込み上げてくる涙を押さえる事ができずにウーと男(?)泣きしてしまった。
 情が深いぜスペイン人。別れってほんとに辛いっ!
 「アディオス! また絶対に来る」と固く誓って後髪をひかれる想いでグラナダを後にした。

 最後の目的地、グァディックスへ移動。
 中島先生の留学時代の悪友フォアンヘ(かなりいい男、33歳、独身)が車で迎えに来てくれた。その昔二人でいろいろ楽しい?事をしたらしい。
 ここは雪山の山脈が見える盆地で、カテドラル教会を中心に放射線状に街ができている。
 建物もかなりアンティック。廃墟っぽいけど味のあるレンガ造りの家がたくさんあって「ああ、撮りたい」と闘志が燃える。メラメラ!
 街を歩いている人々の顔も穏やかに見えて、街角で通り過ぎる時に、「オラ!」ってあいさつすると、みんな「オラ!」って返してくれる。なんだかうれしい!!
 田んぼに囲まれた田舎で育ったカロリーナにとっては、世知辛い都会よりもやっぱり田舎の方が落ち着く。日本もスペインも同じなんだな。人間があったかい。

 大晦日の夜は、先生の友人ホアキンの家で夕食を招待された。
 「あー、この人見た事ある」って思ったら、やっぱり中島先生の写真集「MY COMPANY」に載っていたバルのおやじさんだった。
 ホアキンの家に向かう途中、ドーン、ドーーンという凄い音がして「なに?lと驚いて空を見ると、城壁の近くで大晦日フィナーレの花火が打ち上げられていて、振動を身体で感じながら、凛とした空気の中で見る大輪の花火はとても印象的!!冬の花火なんてこの歳になって初めて見たよ!忘れられないな。

 下町のおかあちゃんって感じのホアキンの奥さんカルメンの手料理は絶品だった。
 前菜のサラダといい、メインの白身魚のソテーといい、うまい! このチーズもハムも貝もいける!!
 スペインの料理は結構淡白で日本人好み。いくらでもいけちゃうぞ!って感じ。それに満腹になって料理を残しても、スペインでは失礼に当たらないという所もありがたい。日本だと満腹で苦しいのに「せっかく作ってもらって悪いから」とがんばっちゃうけど、助かるなあ。まあ、私はそんなに残す事もないんだけど…。
 ワインもいっぱい飲んじゃったぞ!だって旨いんだもん。毎晩酒づけじゃ。

 スペインも大晦日は「行く年くる年」みたいな番組をやっていて、11時55分ぐらいになるとリポーターが出てきて教会からの中継が始まり、みんな葡萄片手にスタンバイ。
 12時を迎えると、「ウノ(1)、モグモグ。ドス(2)、モグモグ・・」。
 鐘の音に合わせながらみんな一斉に葡萄を12個を食べるスペイン式の新年を迎えた。これをやると幸せな一年が迎えられるらしい。

 しばらくするとホアキンの子供たちの友人がゾクゾクとやってきて、「今日の私を見て!」って感じに思い思いに着飾ってパーティー会場へ。正装して年越しするなんて事はした事ないけど、見てるとやっぱりいいもんだな。来年はやるぞ!
 それにしても年越しを家族で迎えるなんて、久しくないな。
 同じ家の中にいてもお互い勝手な事を事していて、明けたと同時に「あけましておめでとう」なんて照れくさくて高校生以来やってない。よくイタリアはマンマの国っていうけど、スペインも家族の絆が強んだなと思った。な〜んて家族を思い出し、ちょっとセンチメンタル。まだ親離れしてないちゅーことか?ハッハッハ…。

 翌朝は朝帰りらしい隣の客のシャワーの音で目が覚め、散歩がてらにカセドラル教会に行って初詣?した。
 教会の入り口には赤いビロードの布が掛かっていて「入ってもいいのかな?」とドキドキして、前を歩いているおばあちゃんにピッタリついて入ると、中は静かに聖歌が流れ、ステンドグラスに描かれたマリア様や天使が朝日を受けてキラキラしていて、柄にもなく神聖な気持ちになった。
 別にクリスチャンてわけじゃないけど、お寺にしても神社にしても神聖な場所って落ち着く。
 「今年はいい年になりますように」と、スペインの神様にお願いしてきた。すると本当にいい年になる予感がするから私って単純。


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