神学者コンスタンチン
教室の隅に座っている
セルの色付き眼鏡をかけて
歯が痛いかのようにあごを押さえて
彼の発する英語は
遠い昔の旅人のようで
どこから来たのかと聞けば
ルーマニアだと答える
閉じられた国で十五年間
ただ本を読んで学んだコンスタンチン
今、教師に発音を習い
それに文字を当てはめて
自分の知識が音になるのが
不思議そうなコンスタンチン
彼は英語の授業が終わると
大学の研究室で
ヘブライ語からギリシャ語へ
旧約聖書を訳している
西の国に初めて出て来た神学者は
スーパーマーケットで
すべての物の値段を吟味する
セロリとブロッコリーと
どちらが日持ちがいいのかと尋ねる
レジの列に並びながら
後ろの私を振り返り
「神を信じない者は
生きる真の基準を知らない」と
美しい言葉をならべて話すので
周りの人々が驚いて見る