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ボッキ〜中島のアミーゴ南蛮珍コ道中記 5-4
クソ踏んでスリが来たぁ〜

 スペイン人に何かを訊ねた事のある人だったら分かると思うのだが、5人に聞くとみーんな違った答が返ってくる・・・。んな調子でも道を訊ねたりする必要性も結構あるから大変だ。それでもみーんな同じ事を言ったのが「道端などでクソを踏んだらもう片方の靴でもう一回踏むと幸運になれるゾ。」
 うーん、確かに分かっていてクソを踏む勇気があれば誰だって幸運をつかむ確率が上がるという事か・・・スペイン風哲学?

 あまりにも田舎町を訪れて尚且つ短期移動だったので、最終日のマドリッドでのカミさんは獲物に群がるハイエナやハゲタカのように目がメラメラギラギラと殺気だっていた。そう、日本国憲法による日本女性への人権保護義務である「海外に行ったら日本よりも安く売っているブランド品を何も考えずに買って買って買いまくる。」に乗っ取っているわけだ。

 んな訳でマドリッドにおいても怪しげなアジア人の旦那は、可愛いスパニッシュ・ギャルに目線を合わせながら、そしてその配偶者は、殆ど首を90度横にしてショーウインドウを見ながら歩く状態であった。

 日本がとっくの250年前にアホらしくて廃止された「生類憐みの令」がヨーロッパ、特にスペインでは今でもあって、犬などは道端でクソをしても良いことになっている。事実、数年前私は飲み屋に入ろうとした時、なんとその入口のド真ん中に投棄してあった馬のフンを踏んづけてしまった事がある。

 横向いてのカニ歩き状態のカミさんにとっては、道端に1億円が落ちていたって気付きやしない。んな訳で・・グニャ〜リ・・クソ踏んじゃった!
 それも投棄されてから少し時間が経過した最高上質のヤツで、外皮が固くて中が柔らかい、何処となく大阪のたこ焼きみたいな感じ。カミさんは、いろいろな方法でもって除去作業を試みるのだがあまり効果がない。そのうち賢明にも「そのうち歩いていれば自然と取れるだろう」と云う法則に気付いた。

 クソ付きのカミさんとテクテクホテルに戻ろうとした。
 そのホテルは、アトーチャ駅の目の前にあり、昔の上野駅の雰囲気にそっくり。つまり雰囲気も超最高なのだが怪しげな人達もウヨウヨいる駅周辺と云うわけだ。一番いけないのは、ちょっとその国に慣れたと勘違いしたリピーター・ジャパニーズすっとこどっこい、そう私だ。
 やめときゃ良いのに、カバンを開けて思い出のアトーチャ駅を写真に撮ろう!なーんて言って、24mm、35mm、100mmとレンズを変えて撮影し、群衆の前で「換金すればお金になるモノを沢山持っているゾ」と云うアピールをしてまった事だ。

 ホテルに入ろうとした時、入口のマットに気付いたカミさんはクツをコスリ付けてせっかく付いた「運」を取り払おうとして「ちょっと待ってぇ。」と言った。いつもはそんな事言うカミさんではないのだがやっぱ外国での疲れもあっての事だったのだろうか。

 私はホテルの扉の一歩手前で止まってしまった。
 すると若い三人が走るように入って来て私達を抜いてホテルに入ろうとした。2人は私の左右を抜き(のように感じた)、真ん中のヤツが私に何かを言って話しかけてきた。そこで私は止まってしまい真ん中のヤツに応えた。良く分からない一瞬の会話があった時、カミさんが「あッ!」と叫んだ。その瞬間、真ん中のヤツが「あ、間違えた、みんな、戻ろうぜ!」と言って走り去った。

 何がなんだかで、ぼ〜っとしていると、、カミさんが「ケンちゃんのカバンを開けていた〜!」
 エッ?と思って見てみると、ワンタッチ式のショルダーバッグのフタが開いていた。
 バッグの本体に入っているカメラなどは、あの状態からは難しいと思ったのだが、手前の小さなコーナーに入っているモノは取る事ができたのに結局は何も取らなかった。そこには文庫本サイズの辞書とか赤い皮の手帳が入っていて、本物のスリだったら取り合えず手帳ぐらいは抜いて逃げたかもしれない。

 無事何事もなくホテルに着いたのが夕方。最後のスペインの夜を飲み明かそうとそれからシャワーを浴びて懲りずに町中へ。

 これからが大変で、飲み屋で大喧嘩。
 「あの時私が、あッ!と叫んだから何も盗まないで逃げて行ったんだからね!」なーんてカミさんは勝ち誇ったように言うので、「あんねー、クソ踏んで『ちょっと待って!』って言うからオレは立ち止まってしまったんだよ〜。だいたいクソ拭くのになんで私が待たなくてはならんのよ〜。フロントは目の前だし、キーを貰ってキミを待てばOKでしょ。んも〜。」
 日本語でわめきあっている私達を、スペイン人達からはどのように写ったのであろうか。その夜は気が付いたら私は寝ていた・・(らしい)。
 明日は朝一番でタクシーで空港に行けばOK。これで平和じゃ、と思っていたのだが・・・


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