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そうそうグァディックスではもう一つ貴重な経験をしたんだった。
それは何かというと、歩きながら写真撮っている時に偶然出会ったホセと言う人に自宅のクエバ(岩盤に穴を掘って造った住居)の中まで案内してもらった事。
突然訪ねていったのに、一つ一つ部屋を案内してくれて、「ぼくの部屋汚いけど」(岡2ちゃん通訳)ってテレながら見せてくれた部屋が「えーこれで汚いって言うの。じゃ、わしの部屋は豚小屋かい!?」ってくらいきれいだった。隠す事がない。人間こうあるべきだよね!
本当にスペインに来て不思議に思ったのは、突然訪ねて行ってもどの家も部屋がきれいに整理整頓されている事だった。
カルメンの家なんて、二人とも朝早くから夜遅くまで働いているのに、どこもかしこもピッカピカ。私と正反対! 突然来られると動揺して、「お願い、ちょっと待ったぁ!」と相手を外で待たせてクローゼットにバコバコ荷物を押し込めたりするんだけど、あーそうそう、帰ったらあの部屋なんとかしなきゃ…ね。忘れてたよ。
それに子供部屋も勝手に開けて、ここが長男の部屋です。なんて見せちゃう所もビックリ。日本でそんなことしたら「もうカアちゃんなんかと口きかねえぞ!」って事になっちゃうんじゃない??
グァディックスでの行きつけのお店は、ホアキンのバル「サヒタリオ」。
店に入ってアリオリ(ニンニク風味のホワイトソース。油で揚げたジャガイモにかけて食べるとうまい)を頼むと「えっ、そんなに頼んでないよ!」ってほどの量が皿にてんこ盛り!しかも頼んでない料理ものっている。「あれ?」とホアキンを見るとウインクしている。もうーホアキンたら!いけずぅ〜。
楽しすぎて忘れていたけど、ここでもやはり別れがくるわけで・・・。
グァディックス最後の朝、 カルメンがバスの駅まで車で送ってくれて別れの時、カルメンが急に目頭を押さえて「ア〜」って泣き出した。
ガラガラ声の世話焼き好きな下町のおばちゃんって感じだったのに、顔をくちゃくちゃにして泣いているのを見ていたら、「お別れなんだ」と改めて実感して、どうしようもない気持ちになって涙がボロボロあふれてきた。
「えっ、ほんとにさようならしちゃうの?さっきまで一緒にいたのに!」
たった3日、されど3日。時間から言えばたったかもしれないけど、たった何日でここまで切なくなる出来事なんて日本であるかな。限られた時間の中だから?
絶対帰ると分っているお客に対して、ここまで心を許して、精一杯のもてなしをしてくれて、言葉は通じなかったけど外国にいるんだというのをすっかり忘れていた。ここにいた3日間、思わず自分は元々ここに住んでいてみんなとは昔からの知り合いなんじゃないかと錯覚していた。
なんで帰らなきゃならないの!?
スペインと日本の距離を思うと、エ〜ン!
そんな人たちが待っているから、中島先生はここに帰ってきてしまうんだろうな。
わかるな、その気持ち!
よく先生に「お前はドカドカ土足で入り込むように人を撮っている。相手への思い入れ、生きてきた時代背景、そこから生まれた文化。行くんだったらやっぱり背景を理解しなくきゃ、いつまで経ったって人なんか撮れないぞ。」って言われたけど、人を撮っているつもりで人ではなく、上っ面を撮って満足していた自分を恥ずかしく思った。まったくそんな事考えていなかったから。
「ただ行きたかったから」だけで来てしまったスペインで、人の優しさに触れて、自分自身の事、家族の事、これからの生き方、いろいろ考えた。(ほんと)
「家族」って実にありふれていて、普段特に意識する事はないけど、自分の味方になってくれる唯一の存在。社会に出て9年たって、世間に揉まれて最近トゲトゲしくなっていく自分自身を振り返って、自分に今必要なもののがスペインでちょっと見えてきた。
今回スペイン旅行記を書くことになって、面白く書こうと思ったけど、思い出すと穏やかなエミリオ、美人できさくなコンチ、見えなくなるまで手を振ってくれたフラメンコギターリストのマヌエル、働き者のホアキン、明るいカルメン、バルで働いていた小学生のフランシー、三島由紀夫を敬愛するフォアンヘ、その他街角であった多くの人を思い出して、なんだかつい感傷的になってしまった。
今回のスペインは「10年目のMY COMPANY」への旅のようだった。
自分より背の高い青年を目の前にして、
「あ、あの子こんなに大きくなったんだ。」
と初対面なのに、なんだか懐しくなったり…。
「この人亡くなっちゃったの?」
と悲しくなったり。
先生はその人たちと10年後も「関係」が続いている。
人を撮るという事は、関係の「終わり」じゃなくて、「始まり」なんだという事が、よく分った。
ありがとう、ホァキン!
でも理屈より意志の疎通ができない事には始まらないんだな、これが!
やっぱりNHKスペイン語講座かな? それともスペイン人の彼氏を作る!な〜んてね、冗談(?)だよ。
私もいつか「私のMY COMPANY」を作れるようになりたいなっ。
その時までしばらく「アディオス!」
最後に今回一緒に連れて行ってくださった中島先生、マリコさん、凛ちゃん、岡2ちゃん、どうもありがとうざいました。いろいろご迷惑をお掛けしましてすみませんでした…。