
スペインの友人エミリオが来日する、それも5人なので舎弟マリコン大塚と車2台で成田へ。
日本人的に早めに行ってしまい、9:05着の便なのに8:30に到着ロビーへ着いてしまった。
早く着きすぎた割にはラテンっぽい外人が多くて、あれ、エミリオの飛行機早く着いたの?と思ったら、メキシコ発8:00着の乗客達だった。
やることないので喫煙所でプカァ〜。
一服して戻ってくると散開した到着ロビーに映画ニューシネマパラダイスを彷彿させる中年メヒカーノス2人がポツンと立っていた。
ん?と思って目線が合ったら向こうが「エスパニョ〜ル?」
背の低い方のおじちゃんが言うには日本の名古屋に留学している息子に会いに来て、その息子を待っている、とのこと。
ふぅーん、じゃ二人で名古屋へ行くんだ。背の高い方は兄弟か友達かな。
「いや、オレはこれから沖縄へゆくんだ」。
つまり機内で知り合った他人同士みたいなもんだ。
「じゃ、ここで何してんの」
「彼の息子が来るまで一緒に待っているんだな」
「ふぅーん、沖縄はいいね、いつ行くの?」
「今日のこれからで羽田からだよ、そうそう、どうやって羽田に行くか教えてくれないか」
英語で記されたスケジュール表を見たら11:45発JAL・・・時計を見たら9時。こんなところで見知らぬ人の息子を待っている場合か?
この名古屋行きのメキシカンをマリコンに任せて、この沖縄メキシコ人を羽田行きバスカウンターに連れてゆく。
「のんびりしている場合じゃない、すぐ行かないとその便に乗れないよ。今からならバスが一番早いよ」
「バスより電車がいいなぁ・・・」
「日本語はダメだよねぇ、でも英語は分かる?」
「No....」
「じゃ、確実に無理だ、成田から羽田までの直行バスがあるからこれしかないよ」
不本意そうな顔をして私を見つめる沖縄メキシコ人・・悪いのは私か?
でも、たった成田〜羽田間のバスなのに高い、いや高過ぎる、3,000円!完全なボッタクリ価格だよ、これ。
一緒に切符を買ってあげてそのバス停まで案内した。
羽田10時20分着なので日本語が全くダメでもなんとか乗れるだろう・・・なんだかこっちが当人よりもホッとしてしまったので喫煙コーナーでプカァ〜。そのバス停に戻ってきたら一緒に並んでいる二人の日本人女性に早くもスペイン語でナンパしている、おいっ・・・こういう性格になりたいな。
「いやいや、いろいろありがとう、日本ってスペイン語通じるんだね〜」
え?その女性達に聞いみたら、たまたまフロリダに遊びに行った時にちょっと覚えたぐらい、とのこと。それでも渡りに船だから「このメキシコ人を羽田で降ろしてやってくれますか」
「日本でスペイン語が通じたのは本当に偶然のラッキーだよ。日本語ができるメキシコ人って多くないでしょ」
「とても少ないよ」
「それと同じくらいの比率だよ。たまたま彼女達はちょこっと喋れたけど、まずは皆無、と思ったほうが良いよ」
沖縄メヒカーノを見送って戻ってくれば、マリコンが悪戦苦闘している。
ここから名古屋までは近いのか?どうやって行くのか?の質問をされているようだ。
到着時刻を1時間過ぎているのに息子が来る気配は皆無。
聞けば名古屋大学の留学生とのこと、優秀だな!
「携帯ノ番号ナラワカルヨ・・」早くそれを言ってくれよ、尾張メヒカーノ。
マリコンが替わりに電話をしてる「もしもし・・あ、えっと○×さんの携帯でしょうか?」・・あん?なんで日本語喋ってんだ?
どうやらその番号は緊急用の日本人同級生のようだ。ダメじゃん〜。
「ところで息子さんは日本に長いの?」
「二ヶ月」
「に・・・二ヶ月?!」間違えて羽田に行ったんじゃないか?
いくらなんでも1時間半経ってもこないのは変だよ。
もし来なかった場合を想定して、おじさん一人でも行けるように成田から名古屋までの行き方をメモしてあげた。
成田のロビーの床にしゃがんで書き込む三人・・・「おおつかく〜ん、一応日本語でも記した方が良いんじゃない?」
「テンパククってどう書くのでしょうか?」
「どこそれ?聞いたことないなぁ、天に白の区で良いじゃない?分からなければローマ字で分かるよ〜」
9時40分になると、エミリオの乗っている便のエアフラの乗客達もゾロゾロでてきた。
彼の息子はいまだ来ない・・・。
私とマリコンは無言で同じ最悪の状態を想像してる。
つまり息子が来る前にエミリオ達が出てきてしまうことだ。
となると、そのおじさんを残して出発しなければならない。何処からみても義理はないのだけど行きがかり上、かなり後ろ髪を引かれる思いだ。捨て猫を見捨て去るのってこんな感じ?
どうにもこうにもならないおじさんの目は涙目一歩手前だ。こっちも泣きたいよ〜。
運良く?たいていの乗客が出払ったのにエミリオ達は出てこない・・えぇ、こちらも待ち人来ず状態か。
個人情報云々でうるさく言われるけど、エアフラのカウンターで乗客名簿のチェック交渉をしなければならないのか?とブルーな気持ち一杯になった10時ちょっと過ぎ、やっとやっとその息子が2時間遅れで現れて涙のご対面。
いやいや、こちらもニューシネマパラダイスのラストシーンを見る心境だね、ちょっとウルウルだ。
よかったね、おじさん〜!
感動したおじさんは財布からドル紙幣を出して私たちへのお礼を示そうとした。
当然断ったが、後で「あれ、何ドル紙幣だったんだろうか?」二人ともドル紙幣には全く縁がない。
100ドル紙幣だったら、おおお、10,000円だよ、今日の飲み代がチャラになったぞ。
1ドル紙幣ってぇことはないよね、それじゃ100円だよ、じゃ、10ドル紙幣か・・・いや、1000ドル紙幣なんてぇのもあるかもよアメリカだからね・・おばかな二人だ。
その10分後にやっとやっとエミリオ達が出てきて再会。
成田でのたったの1時間半だったけど1日分に相当するできごとだった。 |