コンピューターの画面で 一粒の葡萄の種のような爆弾が 異国の町に落ちて行くのが見える
でもそれは 人を潤す葡萄ではなくて 人の命と 人の生きて来た歴史を消す 悪の種
誕生、算数、抱擁、 結婚式、親戚の葬式 書き溜めた日記 すべてが一瞬にして消え つつましやかで善良な 日常の歴史もそこで終わる
戦いに何の意味があるのか 消した後のコンピューターの画面は 泥炭を含んだどうにもならない 腐った葡萄畑のように 暗くよどんでいるが 最期の鮮血がワインのように 斜めに走っている
第35回 神奈川新聞文芸コンクール最優秀賞 2005年度