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山口良幸:神秘の蝶を追って…
 2004年度の「文學界新人賞」に見事堂々たる落選を果たした不屈の迷作、ここに公開!
 世界各国を旅してきた著者が、それら体験を主人公の回想としてオムニバスに展開するリズム感につい引き込まれてしまう。
 夫婦喧嘩が元でオーストラリアから家出して日本にやってきたスーザンを探すも、いつもすれ違い。果たして、神秘の蝶を探しだせることができるのか。

 ピカソの有名な絵のモチーフとなったスペイン北部の小さな田舎町ゲルニカにゆくと、町の真ん中にある広場からなだらかな坂をあがりきった高台に散策に適した緑溢れる公園がある。去年の四月二六日の午後、春のおだやかな日差しを浴びながら、私はその公園のベンチにすわって本を読んでいた。以前メキシコのティファナの書店で買った、スペイン語で書かれている南米の短編小説集だ。
 少し遠くには、老夫婦が談笑しながら公園を歩いているのがみえる。その左手さらに奥には、父親が乳児をのせたベビーカーをおしている三世代家族が、四、五歳の娘を中心にして楽しそうに歩いているのもみえる。中年の太った女性が連れの年老いた男性に『今日は本当にのどかね』とスペイン語で言って私の前を通り過ぎていった。
 気がつくと、近くでは二十歳になったばかりかとおもわれる若い母親が、かがみこんで小さな男の子と、バスク語でたわいもない会話をしている。(皺の深い老人達ではなく、こんな年端もいかない子がバスク語をしゃべっているなんて…)
 私がふたりと直接言葉を交わしたわけではない。しかし、この母と子の語らいをきているだけで、人が自分達の文化、特に言語というものを静かに守って生きているのだなというのを、そのとき深く感じた。今までさまざまな国を旅してきたが、何故かこの場面がかずかずの旅のなかでも私の一番印象に残っている。
本文から

【著者プロフィール】

 山口 良幸 Yamaguchi Yoshiyuki
 ハンドル:ADELANTE / YYT
 1956年東京都港区生まれ。

 25年以上前に大学で英米文学を専攻した私のもっとも気に入っている小説は、ビート・ジェネレーションの聖書とよばれているジャック・ケルアック氏の「On the Road(路上)」です。
 この小説は原書で3回、翻訳で10回以上読みました。
 他には、オスカー・ワイルド氏の「The Picture of Dorian Gray(ドリアン・グレーの肖像)」、F・スコット・フィッツジェラルド氏の「Tender is the Night(夜はやさし)」、ジョセフ・コンラッド氏の「The Heart of Darkness(闇の奥)」などです。
 最近ではポール・オースター氏の小説をよく読んでいます。
 日本の小説では、時代劇小説が好きで藤沢周平氏(「蝉しぐれ」、「海鳴り」、「闇の傀儡師」が好み)や池波正太郎氏(「剣客商売シリーズ」が好み)の作品をよく読んでいます。
 また、忠臣蔵は善悪が逆だったのではないかという疑問をもっています。
 現代劇では、最近の作品は読んでいませんが船戸与一氏(「神話の果て」が好み)の作品をよく読んでいました。


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