友人から写真の修正依頼があった。
箱を開けてみたら、うげ、写真が二つ折りになっていた。これを元の平らな印画紙に戻して、折り目もレタッチしてネガ付きで納品。
太平洋戦争の頃の写真。聞けば、旧満州にて陸軍最新鋭戦闘機を開発したチームの記念撮影とのこと。当然ネガはない。
【修正方法】
- 取り敢えずは折り曲がったのを戻さないと何も始まらないので、ぬるま湯を入れた深バットにそっと浸した。60年ぐらい前の乳剤なんて戦中もあって良質な訳がなく乳剤が剥がれないようにそっと・・。
なかなか折り目が戻らないので少しお湯を足そうとし、間違って蛇口を急に開けたらその水量で周辺の乳剤がちょっと流れてオーマイガッ。あぶねぇ、何もない空で良かった。
- 平らになったらそっとお湯を抜き、そのままタオルの上に置いて自然乾燥。
スポンジにしろスクイズなんてしたらおそらく真っ白な印画紙になること請け合いのご法度。
- 乾いたらドライマウントプレスでフラットニング。
ここでやっと普通の印画紙風に扱えるようになったが、白い手袋必須なので歴史家が国宝級の書物を扱う気分を味わえた。
- 昔の印画紙サイズなのでA4とかではなくB4風。よってスキャナーでは一度に取りこめず、2度スキャン。
ネガを作るので、B3プリント用に360×500mm/350ppiの画像になるように張り合わせる。当時はMacPC G4 dual 867MHzだったのでPhotoshop CSが遅かった(涙)。
- 大きな折れ目が1つ、小さいのが2つだが、運悪く人物の所に大きいのが入っていて、最悪にも乳剤ははがれ落ちていた。仕方がないので、スタンプツールとブラシツールで気分はベラスケス。この作業だけで徹夜モード。
- でき上がったのをB3にネガプリント出力し、それを6×7で複写。モノクロなのでシャープカットフィルターのY48を入れる。
- ネガで改めて8×10厚手バライタに焼き、80年ぐらい保つように処理して納品。
60年前のあまり良くない印画紙とは言え、結果として60年保った訳だからこれは逆にモノクロ銀塩の凄さと言えるかも。
友達はまた聞きにしろ戦闘機と言っていたけど、どうみてもデカい。終戦間近なのでB29などへの迎撃機かもしれない、羽根が2枚というのも不思議だけど。機体はシルバー風。配備時には塗るのかな?
それにしてもさすが中国大陸、背景には何も写っていない。ただ、秘密保持の為に背景を消した、という可能性もある。いずれにしろなんか貴重な写真って感じだ。
と思っていたら、航空関係に詳しい友人から、これは軍用機ではなく長距離飛行の為の航研機であることを教えてもらった。
初めて聞く航研機(こうけんき)、調べてみたら「古典 航空機 電脳 博物館」というサイトの中の「航研機 物語」内に詳しく記されていた。
友人の「最新鋭戦闘機」って何だったんだ?単なる伝聞のズレなんだろうな。
この記事によれば、この写真の飛行機は昭和19年7月に旧満州の新京〜白城子〜ハルピンを飛んだ航研機と思われる。
いずれにしろ65年前の写真を自分の手で修正できたのは嬉しいし、改めて銀塩の有効保存性に「ビバ、モノクロ!」。