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Time To Time 2011-2013 : 36-15
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訪 問


バスは川沿いの道を 
流れと反対方向に走った

やがて道は崖沿いになり

川の向こうにも凝灰岩の壁がそそり立つ

白みを帯びた岩壁は頑なで
ところどころ墨汁のような汗が流れている



終点からバスは引き込み道路に入ってしまい

たった一人の乗客の私は
放り出されて歩き出す

岩壁の果てから川は急に右に曲がり

道も急に曲がり

潅木が増えてきて

岩壁も白い泡ふく急流も

木々の間にしか見えない

遠くから走って来るものは

犬か狼か

青黒い体を躍動させたまま

「コンニチハ!オマチシテオリマシタ」

と言わんばかりに

腰のあたりに前足をかける

岩壁も川音も遠ざかり

犬と私だけが湿り気をおびた薄明るい道をゆく



左手に開けた日の当たる場所

手入れの良い木造の平屋

庭の物干しに白い布と灰茶の毛皮
何か黒い塊を火であぶっていた男が振り返る
はしばみ色の狼のような瞳

「やあ、やっときてくれましたね この石の村へ」
包帯をした太い足首に

犬が鼻先を近づける

「いや、さっきそこの藪で蛇に噛まれちまって」

Time To Time 2011-2013

36 - 15
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