INICIO > Exposición > Time To Time 2011-2013
Time To Time 2011-2013 : 36-26
前へ/Anterior
双 肩


その女性は風吹く草原を歩いてきた

地軸との角度や

地球の中心までの距離を知ったような

確実な足取りで

余りに華奢なので

風だか骨だか分からないほどに
上半身だけ揺れていた

近づいてくると分かるもの

右肩に絶望 左肩に奇跡



女性がさらに近づいてきて

手を伸ばせば触れるぐらいになると

そこは鏡だと分かる

怖くなってしゃがみこむと

女性はゆっくり回転を始めて

その横顔から

見た記憶のない自分の母親だと分かる



遠心力で鏡の外に放った左肩に載っていたもの

女性は片方の肩を落として

妙なバランスで遠ざかって行った 
風吹く草原を
宇宙の果てを見てきた者のような
おぼつかない足取りで

風だか骨だか分からない半透明な姿で
私は手を振る
ふりかえらないのに女性は手を振り返す



手のひらで包めば
それは薄紅色の光の玉 あたたかい
もう治らないといわれた病気が
明日、治っているかもしれない

Time To Time 2011-2013

36 - 26
前へ/Anterior
 intro.  1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11  12  13  14  15  16  17  18 
 19  20  21  22  23  24  25  26  27  28  29  30  31  32  33  34  35  36 
次へ/Siguiente

次へ/Siguiente

Volver