心が悲しみの深淵に落ちて行った時 都心の美術館を訪れたことがある 古代中東ガラス展示室 私は涙壷の前で凝固した 愛する者を戦場へ送った後に 悲しみの涙を溜めた壷は 不透明なターコイズブルー 私はそれより深い青色の 自分の魂を詰めて 見えない蓋をして 美術館の片隅にそっと置いた
虚ろな心に少しずつ空気が入り込み 幾年かが過ぎたが 私はそれ以来 あの美術館に行ったことがない あの壷は建物の片隅で あるかないかの存在で 私の魂を沈殿させている