海 鳥
海が冬の境界線まで輝いている
海鳥は格子窓を対角線に横切ったかと思うと
瓦屋根の庇すれすれ上空へと舞い上がる
よく見ると嘴が笑っているのが分かる
この季節に
何を得て何を失ったか
考えてはいけない
この一生で
何を得て何を失うのか
考えてはいけない
海鳥は病気という言葉が無いために
恐れずに海を渡る
ましてや病んだ心などという
不確かな言葉は不在で
そして突然時空を超えて消えてしまう
得たものも失ったものも
多分何も有りはしないのだ
海が冬の境界線まで輝いている
その向こうへ飛んで行った鳥は
もう二度と帰って来ない