夾竹桃
白い夾竹桃が咲いていた
それは微かな羞恥心を与えた
紅い夾竹桃が咲いていた
それは残っている微かな希望を思い出させた
夜に細かい星が降った
潮騒が聞こえていた
うっすらと砂塩の積もった路を
猫が足跡を残さず歩き去った
アパートの表の灯は暖かく
白壁とオレンジ色のスペイン瓦が
古代から在るもののように
そこに存在していた
自分の小さな生活を背にして
バルコニーからずっと夾竹桃を眺めていた
そして季節の変わり目に
あの海辺の町を去った日に
頭の1/4をあの町に置いて来た
それからもうどこへ行っても
生活も無く遠近感も無く
白い夾竹桃の枝先に
私の頭の1/4はぶら下がって風に揺れているのだ