診察室
長椅子からシダ植物が生えて来て
腰のあたりを包む頃
看護婦が思い出したように
名前を呼んだ
病人はシダを引きずりながら
重くゆっくり医者の前に進む
病人の精神的肉体的悪化パフォーマンスに
医者の客観的分析的パフォーマンスが
実にみごとに対峙して
失意の黄金の微粒子が
診療室いっぱいに飛びかっている
窓の外の木々は
正常に秋の表情をしているし
人々は働いたり遊びに出たりしているのだ
こんな時期に病人は
シダ植物を引きずったまま
今度はいつ来るか分からない帰りのバスを待つために
暗い廊下をよろめき歩く