曳船が通った後の波影に ゆりかもめが二羽揺れていた 水は深緑に淀んでいたが よく見れば足元に魚の姿もあった 倉庫は英国家具の展示場もかかえた大きなもので ゆっくりエレベーターは地下へ降りて行った 鍵を外すと八畳ほどの部屋が現れた 「そうですね じゃ一月から五年間の契約でお願いします」 ここに収納される 家具やアイロンやアルバムや 発つ日までの想い出を思いながら 地上へ戻った 波の音や船の音や 鴎の泣き声や 魚の泳ぐ微かな振動が 毎日聞こえるのだろうと思った