私からすれば、ハッセルでもなければライカでもなく、やはりこのフォコマートが何よりものステータスだった。
それでも引き伸ばし機に300,000円はなぁ?という状態がずっと続いていた時、そして運悪く300mm f2.8をキャッシュで買った直後に、銀一でこの中古を見つけた。
1987年、230,000円という値札が付いていた。
カメラマンをしていてもライフワークのモノクロはずっと撮り続けていて、フォコマートの集散光式も製造中止となっていた。
「こんな高価な暗室用品を買えば、忙しさにかまけてモノクロをやめてしまうこともなくなるだろう」と勝手な大義名分を掲げ、愚行とも言える24回払いでゲットした。
何故愚行かというと、同時期に2400wのストロボセットを36回払いで買ったからだ。
集散光式と言っても日本製のとは多少違っていて、やや軟調と言おうか独特である。最初はネガ作りに苦労した。
オートフォーカス機能が付いていて精度はとても良いのだが、貧乏性なので大伸ばしの時はその都度合わせている。
その独特のトーンというのがあるのかもしれないが、だからと言ってそれが国産のより優れているとは思わない。
しかし同時期から使いだしたライカとモノクロの組み合わせで続けていればそんな調子になってゆくのだろうか、後年、故植田正治氏に写真を見せたら「おおぉ、キミ、これライカでしょ」と言われ、うーん、そんなトーンというのがあるんだなぁ、と痛感した思い出がある。
因にそれはライカRだったので、レンズにおけるRとかMのトーン自体の違いはそれほどないと思う。
支柱が120cmぐらいあるから、そのまま上げれば大全紙だって可能である。
支柱の長さがいろいろ違うのがあったり、ヘッドの色、または伸ばし倍率メーターの形状など、結構さまざまのがある。
フォコマートのコンパクト版として「バロイ」というのがあって、ユージンスミスが水俣病を撮りに来日した時、一緒に持ってきた引き伸ばし機として有名(と聞いたことがある)。
その時のアシスタントが、森永純氏。
フォコマートの特徴としては、コンデンサーレンズでネガを押さえるので、より平面性を保てるという点である。
普通のガラス製のコンデンサーなのでニュートリングは避けられず、コンデンサーにはめるアンチニュートリングキャップ?が必携であるが、これが付属していないでそれなりの値段で売っていたりするので要注意だ。
現在、ライカ社ではこの部品供給はしていないが、何処かの日本の会社がそれを販売するようになり、まだフォコマートの需要があるんだなぁ、と嬉しくなった。価格は、30,000円ぐらい。
しかし、ライカもそうだけどブランドだけにこだわるのは好きではない。「フォコマートを使っていて、下手くそな写真やプリントを量産していて恥ずかしいと思わんか?!」と自問自答し、そして開き直りながら愛用している。
レンズ(フォコター)等については、「BESELER 23CIII-XL」にて。