オーエンに手紙を書くと 必ず電話で返事が来る オーエンの声は甲高く その高音部は揺れている 私はオーエンの言葉から 老人ホームのベージュの布壁と 白い枠のフレンチウインドーと それに続くバラ園を知っている オーエンは財産を譲る相手もいないので 北の国から電話するのだ たった一度だけ公園で話した 訪れることもないだろう シベリアをはさんだ極東の町へ オーエンは長い長い電話をするのだ