グラナダのゴメレス坂、寄木細工工芸職人といえば誰もが知っている、親日派(日本の可愛いセニョリータ好き)のエミリオである。過去4度の来日で、カラオケ好き(特に演歌)となり、親戚連中にカラオケを広めた御仁でもある。
バモスの会員が訪れれば、お決まりのコースを案内する。工房裏の急坂を上り、夜のアルバイシンが見える場所への探索、そして義弟夫妻が経営するバルへ案内。いくつかのバルのはしご。現地で困ったことがあっても、ノー・プロブレマといって解決してくれる頼りになる人物である。スペイン人には珍しく相手の気持ちをくみ取る術をもっている。日本の以心伝心にも近いものである。また、義理人情もある。
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エミリオ一家。ゴメレス坂にて |
エミリオ宅の庭にて夕食 |
1995年宮崎の某スナックにて |
グラナダは、イスラム王宮「アルハンブラ宮殿」のあるスペイン南部の都市。グラナダ寄木細工は、直線的なアラビア紋様に牛骨をはめこんだ細工で、スペインを代表するイスラム文化の工芸品のひとつ。
現在、グラナダに寄木細工工芸家は10名しかいない。そして、ほとんどの寄木細工工芸家が家業として先代の跡を継いでいる。
エミリオ・バルデビエソ・マシアス
1942年9月20日生まれ、グラナダ出身
10才の時より修学の傍ら名匠ファン・オカニャ氏の工房にて修業を始める。
10年間の修業の後、自分の工房を持つ。
その後スペイン国内は勿論のこと、アメリカやヨーロッパ各国で実演を行っている。
過去3度、東京の有名デパートの招待により来日。それ以降、親日家となる。
ワインとカラオケをこよなく愛する。
妻、娘2人、息子1人、孫2人。
● アラブ様式の寄木細工(象嵌)について
材料は、ヨーロッパ産やアフリカ産、特に中南米産のイトスギ、イチジクの木、コクタン(黒壇)、クルミ材、シタン(紫壇)、その他の高級な木材などを使用する。製作の修得には相当の年月を要する。
まず、稲妻模様(ローマでは、非常に細かくて暗い色調の模様)を作る。また、ユダヤ風とアラブ風の色鮮やかな星型の寄木を準備する。
土台となるポプラの木は、新大陸発見の発祥地ともいわれているグラナダ郊外のサンタフェ村(イサベル女王がモーロ人からグラナダを奪回するために陣をはる。新大陸発見航路のための資金援助を求めてきたコロンブスに対してイサベル女王が資金提供を約束した場所でもある)で育ったものある。アルハンブラの優れた工芸家が描く図柄のすべては、ユダヤ調とアラブ調となっている。
20世紀の初め、薬屋やグラナダの商人達の家では、室内装飾として食堂、寝室などに寄木細工入りの大型家具を飾っている。
内戦後(フランコ将軍の勝利)、1950年頃からスペインで団体旅行が流行しはじめ、観光客用に、チェス盤、お盆、小テーブルなどの寄木細工が作られるようになった。
伝統的な製作方法は、現在忠実に受け継がれており、すべての寄木細工は愛情をこめて丹念に作り上げられている。すべて手作業ですが、製作コストを抑さえるために簡単な機械を使用して図柄を描いている。機械化に頼らず、手作りの良さを守り続けており、大量生産を行っていない。
これらの技術は、スペインでは貴重な財産となっている。
姫野 幸司 記
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