
「ナカジマさ〜ん、夢があるのなら強くそれを思うことです。そうすると必ず自然とそれに近づいて行きますから」と、自分に言い聞かすように熱く語った言葉が今でも記憶に残っている。
1991年11月、ホァキンのバル「サヒタリオ」でのことだ。
私がマラガに住んでいる時、同じスペイン仲間の小島さんが来るというのでGuadixで再開した。
酒もタバコもやらないけれど何故か埼玉の与野駅前で酒屋を経営している面白い人だ。
定年近くなったのを契機に仕事と家を売り払い、我が家の近所に新しく家を建てたのだが、どこから見てもスペイン風、誰が見てもそれは御殿のようにデカかった。
余った土地に賃貸アパートも建てたが、その名前は「Casa de alegría(楽しいお家)」。
帰国してからカミさんと小島御殿に遊びに行ったりもしていたが、60才ちょっとで胃ガンで亡くなられてしまった。1993年3月のことである。
生前「ナカジマさん、これ聴きますか?」と手渡されたのが数本の音楽テープ。
取り立てて写真を趣味としない小島さんは、もっぱら市井の町並みやFMラジオなどを録音しては聴いて楽しんでいたようだ。
当時はインターネットや携帯がまだなく、やっとパソコン通信なるものが普及次第した頃で、それをダビングしておいただけで留めていた。
近年CDRが普及し、それらテープをCDRに変換録音することができるようになり、そしてやっとインターネットでも動画や音源などが一般的になってきた昨今、この20年前に録音したのを編集し、このホームページにて保存的に載せ、故小島さんへ捧げようという次第である。
90年代半ば、お互いの親友だったパコも交通事故で死んでしまった。今ごろはあちらで二人で飲んで騒いで楽しい日々を過ごしていることと思う。