アパート
道は投げられた縄のように
ゆっくりと丘を回り
向こうの丘の住宅地が見えるあたりが
弧の頂点となる
向こうの丘の中腹にあった
蔦で輪郭のぼやけたアパート
突然末期はやってきて
蔦は払われ
スレートの屋根ははずされ
蔦の下の壁もなくなり
雨が染みたような柱だけが残った
二階建ての八家族分の建物は
肋骨のようにそこにあり
半年経ってもそこにあり
もしかしたらこれは夢で
もう存在しないのではないかと思い
あるいは私が建物なのかと思い
振り返ってみれば
やはりそこに骨組はあり
若夫婦や老人やインコが
ユラユラと暮らしていたりする