谷底から音が上がってくる 広場の集会の声 聖堂の前のカフェのざわめき 犬や猫の声も混ざっているが 羊の声は空に上がって 雲に変化した 私は見ていた 聖堂の向こうの地平線を 私が忘れているだけで 私が生まれたり 死んだりしたことのある 小さな場所を 私はカモミールのちらほら咲く 丘を一周しながら 見ていた それは思い出なんてものではなく 真実だけの光景 だから 私の目は急に 古代の洞穴のように 深く沈んで行ったのだ