「スペインへ行こう」と 写真家が言った バッグから シルクロードの案内書を取り出して 見せようとした2秒前
「グラナダへ」 マラガから登る車道と 幾重にも重なる 石灰岩の山々が 写真家の瞳に映っている
写真家は着いた瞬間 きっとどこかへ消えてしまう わたしは 灰色の石に座り 膝を抱えて 一日中 光と影と 影と光を 見て過ごすのだ
スカートに鳥の影が 映るかもしれないと 思った瞬間 シルクロードの影は消え去り わたしは応えた 「うん、行く」