影のありか
輪郭がぼやけた時はまだよかった
青紫を帯びていた時も
ある日
影はとうとう無くなり
それは
刺せば液体を流す有機物が無くなるよりも
恥ずかしく
自分の命に恥ずかしく
雨の午後を選んで買いものに出かけたり
深夜映画を観たりして過ごした
もっと大切にすればよかった
あんなに南の国に行きたがっていたのだから
夜のレンブラント広場で
すれ違った男
夜目にも分かる灰色の瞳で笑いかけ
街灯の下の石畳を指さした
骨しかない影が指をさす
わたしたちは愛し合う
立派な影を生むために
刺せば液体を流す有機物を愛しむ
月の光が部屋の壁まで届き
青い骨だけがほのほのと浮かんでいる