雨を待っている 通りや広場に面したカフェのガラス窓 雨は天気予報どおりに あるいは少しだけ遅れてやって来る 中央郵便局の向こうから あるいはターミナル駅の屋根を越し 激しい雨は 窓ガラスを通りぬけ 髪を濡らし 皮膚を濡らし 体の中に降りそそぐ 心の一部がプラタナスといっしょに流れてゆく
屋根の上を 透明な龍の一群が通り過ぎる 口元に笑みを浮かべて もうこれ以上わるいこともよいこともおこらない 雨雲が去ったあと ポケットに鱗を一枚見つける それは方解石より少しかたく 雲母よりも温かい