電 話
044・955・2386
時々夜明けにダイアルを回す
かつてそうしていたように
数字は夜明けのトンネルを抜け
うつけた過去へと戻って行く
044・955・2386
トンネルの向こうは往き止まり
「もしも…し」
「この番号は現在使われておりません」
そう、この番号のかつての主は今隣で眠っている
夫という大きな脂身となって
「もし、も…し、」
何もあなたに不満がある訳じゃない
でもあの蒼く透んだ夜明けに
わたしでけ置いてきぼりにされて
得たものと失ったものを
失ったものと得たものを
わたしは夜明けに繋ぎなおそうと
ひとりでダイアルを回す
ツー、ツー、ツー、