■ 再編入
昔、埼玉県の越谷市にある文教大学に通っていた。
一応、中学校の英語教師を目指し、学部は教育学部中等教育課程英語専攻というやつだ。今はこの学科は文学部英米語英米文学科になってしまった。
教員採用試験は点数さえ良ければ良いと思っていたのが大間違い、というのが後になって分かった。
確かに点数が良ければ受かるが、A採用とB採用というのがあって、採用確実なのはA採用で、B採用は順番待ちとなり、かつその合格有効期限が1年しかなく、1年以内に採用のお呼びがかからなければまた翌年試験を受けなければならない。
A採用になるのには大学の成績が重要で、「良」は多くて3つまででそれ以外は総て「優」でなければならず、「良」が4つ以上だと厳しいとのこと。私も「良」が3つだけどそれ以外は総て「可」だ。
そんな情報を友達から聞いたのが3年になってからで、初めて聞いたよそんなの。今更ジローだ。どうあがいても中学校の教師は無理だと観念し3学年の9月で中退した。
その後、幸いにも学歴には全く関係のないフリーランスカメラマンになった。
しかし50歳半ばとなり還暦が身近に感じるようになった時、自分の為に中退を返上し大卒という学士を取ろうという意識が強くなった。
■ 大学選び
簡単に言えば、目的は学士を取るだけだ。
しかし当然ながら学ばなければならない。となれば、自分に合った学びやすい学問のスペイン語だ。
働きながら学ぶので、まずは夜間を探すも首都圏の大学はゼロで、関西とかに1つか2つあったけれど通いなので無理。と言おうか、夜間と言えども高校生対象の試験があるので、そんなのに受かるには、その為に最低1年間は気合いを入れて勉強せねばならず、今から忘れまくっている英語と古文を受験のために勉強するのは本末転倒だ。
次に俗称「3部」の通信制を探したが、スペイン語なんて当然皆無だ。
もともと通信制の大学は働きながら学ぶ人を対象にしているので、職業的資格取得に関連した学部が多く、マイナーな言語のスペイン語なんて蚊帳の外だ。
大学を3年以上で中退すると短大卒扱いになり、再編入の3学年からを認めているのが多く、スペイン語を諦めて近郊の大学を改めて探してみる。
慶応大学や早稲田大学にも通信制があった、おお。飲み屋とかで「オレ、慶応ボーイだよ」なんて言うとウケそうだけど、いずれも2年次からの再編入なので3年間通うのはちとつらい。
他、幾つかあったが、いずれも法学部、経済学部、商学部など、私にとってはかなーり門外漢なものばかり。
ふと、ここ最近、勉強し始めた中国語を思い出した。
探してみたら慶応大学ともう1つ、佛教大学文学部中国学科というのがあった。佛教大学、何処だ?京都だってさ。
通信なので殆どが自宅勉強で、スクーリングでの京都行きの回数もそれほど多くないだろうと高をくくりまくって入学案内願書を取り寄せた。
■ 入学手続き
入学を申し込むのには、何にしろ以前の在籍証明書が必要なので、何十年振りに母校の文教大学を訪ねた。
新たな校舎がいろいろできていてモダンなキャンパスにはなっているが、ちょこっとながらも昔の校舎が残っていた。
学食もさすがに昔のプレハブではないが、変わらぬミニオムレツ付きの340円ランチがあって懐かしい〜。
佛教大学の再編入学手続きだけど、簡単にしろ筆記試験とか面接とかがあるのかな、と思っていたら、志望動機を日本語で記して入学金と授業料を払ったら、数週間後にどっさりと教科書とかシラバスなどの書類が届き、それが入学の証になっていた。
佛教大学の通信教育は前期と後期に分かれていて、それぞれ4月と10月。私は後期の3回生となった。
文教大学の時は「オール可」だったので、佛教大学では「オール良」が目標だ。そして、卒業できたらちょこっと飲み屋とかで「オレ、大卒〜」と言ってみようかなと。
■ 学生証
この歳で学生証なんぞをもらうのはなかなか新鮮である。
すぐ思いついたのは高額なアドビソフトのアカデミック版だ。しかし必要なソフトはもう既に持っているのに気付いた。他のソフトも探したが同じく正規版を持っていた。映画は見ないし美術館もそんなに行かないので、学割の恩恵を受けていないのが現実だ。
JRの学割もあるが、運賃だけが20%引きで新幹線などの特急料金には適用されないので意味はなし。
入学して1年半経とうとしたところで、まだ一回も学割を使っていない。いや10%割引の夜行バスでは使ったが、学生証提示とかが全くなく学生じゃなくても学割価格で乗れるようだ。
それではと、アップルストアでMacBook Airをゲットした(2014.1)。
一応学割価格だと5,000円ぐらい安くなり、「あなたは学生ですか?」が表示される画面で「はい、そうです」のボタンを押しただけで、コピーした学生証などをアップルにファックスしたり郵送することもなく、すぐ届いた。ちょっとした勇気があれば学生じゃない人も学割価格で購入できるようだ。特製ぶったん壁紙を配置する。
← 大学の校章とロゴマーク
シールとかがあれば嬉しいのだが売っていない。
■ 佛大通信
毎月送られてくる「佛大通信」。
普通の大学の月刊会報誌などとは違い、学生課や教務課からの、または試験情報など各種詳細情報のお知らせがてんこ盛りに掲載されたキャンパスにある掲示板の書籍版みたいなもので、通信制は毎月これを読んでチェックしなければならない。
他に教授訪問インタビューやイベントなどのお知らせもあってなかなか面白いのだが、最初の告知コーナーにて毎月行われる課目最終試験時のカンニング不正への処分が3ヶ月に2回ぐらいの割合で載っている。それも何故か教員資格関連の学生が多い。
「教師は聖職」というのは遠い昔のことで、今は教員免許は資格の一つとなり、資格を取れさえすれば良い、という感覚の時代なのだろう。しかし佛教大学の課目最終試験はテストではなくレポートなのでカンニングのしようがない内容と思われ、どうやって不正するのかが実に不思議だ。
■ 学習会
現役の学生がボランティア的に各地に支部を作り、新入生や他の学生への学習支援や親睦、または勉強会などを行うのが学友会で、主に課目最終試験の会場の別室にて学習会などを開催する。
ここにおいて履修方法やレポート提出などのことなどいろいろ先輩達からアドバイスを受け、とても参考になった。また、何回か顔を出していると友達もでき、やっと大学生らしい実感を得たりもする。そんな人達とひょっこり京都のスクーリングで会ったりするとそれこそ「ひょんな所でお会いしましたなぁ」になる。
京都がメインなので、私の埼玉は、群馬と栃木と一緒の「北関東支部」に属しているようだ。
関東の中では神奈川支部が活動が盛んで良く支部主催の勉強会に参加させてもらっている。勉強会よりもその後の親睦飲み会が楽しみで、乗り換えゼロの京浜東北線で会場の桜木町へ通うこと多し。
現役と言ってもみんな還暦を過ぎた人達も少なくなく、学年も5回生、7回生などがたくさんいて2年や4年で卒業するのが少ない。一度「ちゃんと卒業する人の割合ってどのくらいですか?」と教務の担当者に聞いたことがある。「うちは多い方で、7%ぐらいかなぁ」・・・92%はフェードアウトっすかぁ?もちろん留年してからの卒業は含まれてはいないと思うけど、かなり少ない。
というのは、単に当人の勉強不足とか言うのではなく、例えば2つの必修科目がスクーリングの同日の同時間に開講していて、かつ夏しか開講しないというのがある。3年で1つを取り、残りを4年で取れば良いのだけど、仕事の関係などで3年のその時にいずれも受けられなかったりすると、その時点で留学確定となる。
確かにカリキュラムを見ると、ちゃんと2年で卒業できるようにはなっているが、かなりタイトで、もう一年延ばして少しじっくり取り組もうか、という気持ちさえも芽生えてきそうである。
後日、名目上の書記という学友会のスタッフになった。
交通費は一応出るのだが、地元でやる場合は、タバコも買えない運賃になるので、さすがにこの時だけは請求したことがない。
毎月、東京で行われる学習会は持ち回りで各支部主催で行われ、その主催手前の学習会をサポートし、北関東支部の場合はその手前の主催はいつも神奈川支部で、ぶったんマークを付けた自作ネームプレートをぶら下げてお手伝いをする。主に入口に立って、受験者達に学習会お知らせのチラシを配っている。基本は大正大学で行われるのだが、時には神田のビジネスセンターや両国のファッションセンタービルで行われる時もある。。
スクーリング以外殆ど大学と接することのない通信生にとっては、こういう学友会への参加はサークル活動のようで昔を思い出す。
|