【大陸商法】
数種類の伝統工芸品とそれを収める黒檀のショーケース、まとめて送料関税込みで180万円。誰が買うか?と思っていたら、後ろの日本人のおばちゃんが手を挙げた。昨年8月の北京古代建築博物館のことである。
そういう商売は北京だけかと思っていたら旅順でも行われていたので国を挙げての人民会大商売大作戦なのかもしれない。1つ売れれば、20名定員の29,800円ツアーなんて十二分にペイできてしまう。つまり国家が胴元となって旅行代理店や航空会社など全てが連携されているのだろう。
場所は、旅順国立博物館。
ハリーポッターに出てくる由緒ある図書館みたいな館内に清の時代の歴史物が沢山陳列してあり、撮影禁止なのはミイラだけ。
観覧指示に沿ってテクテク歩いて最後の出口の前にある小さな小部屋にみんなを招き入れた。何故か職員がドアを閉め、どこかしら隔離された感じだ。
先ほどの歴史展示物からすればやや見劣りする工芸品が展示してあるだけなのに何故か「撮影禁止」。
流ちょうな日本語を喋る学芸員風の女性がそれら見劣りする品物等を説明している。「これらは先ほどみなさんがご覧になった歴史あるものではないですが、現代の中国を代表する著名なアーティストが作った品々で、これらの売り上げは歴史物品の保存と修復に充てられます・・」、どっかで聞いたことがあるぞ。もしかしてまた185万円とか言うのではなかろうか?
果たしてその学芸員「180万円で販売しております」。
お宝探偵団の中島誠之助先生じゃなくても、誰が見ても180万円の価値はないよ。髪の毛も残っていたミイラならそれ以上の価値があるけど。
その雰囲気を察した学芸員、すかさず隣の小振りな黒檀ショーケースを指して「こちらですとお手頃な120万円になります〜」。
ここまでなら、間抜けな中国人、こんな子供だましな商売、だれも引っかからないよん〜、と思うのだが、これに手を上げる御仁がいるので、間抜けなのは日本人になってしまう。
あちらこちらいろいろ海外を旅行している旅慣れた自由業風の中年男性が手を揚げた。こういう人がなんで手を挙げるんだよ〜。日本人海外旅行七不思議の一つだ。
おまけに「値切ったら120万円が100万円になりましたよ〜」、おいおい、そりゃ値切ったとは言わんよ〜。
同じ日本人としてこういうのは見たくないので外に出て一服していると、同じくツアーの人がやってきて
「あれ、ヤバくないですかねぇ?」
「いや、ウルトラCでヤバいと思いますよ〜。説得して買うのをやめさせるのはどうですかねぇ」
「いやいや、買う気マンマンで値切っているのでそんな雰囲気じゃないですよ〜」
フラっと言い値で買ってしまうことのある叔父さんだったら殴ってでもやめさせ・・いや、一緒になって40万円ぐらいまで値切ったかもしれない。
「でも、クラブツーリズムの資料には、送られてきた品物が実際と違っていたりするので、その場で梱包させたりして確認するのが大事、と記されていましたよ・・・」
ホテルに戻ってから改めてその資料を確認した。
<<お買い物の注意>>
旅行中にお土産屋や博物館などで購入された全ての商品は、日本帰国後の返品、返金、交換は一切出来かねます。
その場で商品内容・個数に間違いがないか必ず確認!領収書をお受け取りください!
あのね、屋台で値切りまくった本物かどうか分からないオメガの時計なんて最初から返品返金なんて無理だっちゅーの!領収書なんて最初からありはしない。何を言っているのだ?と思っていたら、この「博物館」という文字を見落としていた。
クラブツーリズム、裏事情を分かっているな。
明言できない何かの理由があるから、このような曖昧な言い方になっている訳だ、というのを今改めて気付いた。
真面目な話、いくら雰囲気に乗せられた、と言っても、ちゃんと近寄って見て手で触ってみれば、120万円の価値があるかどうか、なんてすぐ分かると思うのだけどなぁ・・「国立」という権威的な言葉に騙されてしまうのか?
日露戦争の終結会見場所というのがあって、乃木将軍とステッセル中将が調印会見した「水師営会見所」。
文化大革命で壊されてしまったが1996年に資料に基づいて再建したらしい。
中央のドアを入ると受付みたいなのがあって右側の部屋に通される。当時の写真などが展示されていて女性スタッフが当時の模様を説明してくれる。
それが終わると左側の停戦調停会見部屋に通されて全員が入ったらドアが閉められた。またまた嫌な予感がした。
さすがに180万円はないが、部屋のコーナーの棚には会見ゆかりのある品々が並んでいるとか言って「これらの売り上げは歴史物品の保存と修復に充てられます・・」、どっかで聞いた事のあるような口上だ。
その品々のいずれか2つ選んで1万円。ゴルァ、日本人をナメとんのかぁ!
買うヤツがいるからナメまくられているのだろう。その品々の中に、昨年大連天津街の屋台で90元(1,130円)で買ったなんちゃってオメガ時計もあった。
後日、どっから見ても3割り増しで高いだろう!みたいなお茶屋に連れて行かれたけど、どこかしらホッするような気持ちで一杯だった。
こういうお茶屋のパターンは、まずはあれやこれやお茶を煎れてくれる。そして、そのお茶の蘊蓄を一通り聞いていると、買わなければならないような雰囲気に包まれる。
真のグローバル感覚を身に付けるのなら、平然と「要らねぇよ」と言い切れる勇気を持てるかどうかだ。
なかなか言えないよなぁ。だってみんなそれなりに買っているんだもの〜。
中国ツアーにて、土産物売り場なのにドアを閉められて撮影禁止だったら要注意!
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