犬を連れた人
最後のプラタナスの散る晴れた日
老人が大きな犬を連れて歩いていた
伸縮自在のヒモの最長のところで
犬は飛び跳ねていた
老人は落ち葉を確実に踏み
若い犬は命を躍動させて
落ち葉の上を跳ね回る
犬は生きているのが嬉しくて
老人を何度も何度も振り返り
「楽しいね」という顔をする
老人は深緑のベンチに腰を下ろす
犬も主人の命令に従うが
今度は膝の上に両前足を乗せ
「好きでたまらない」と瞳で言う
後ろから歩いて来た私は
「いい犬ですね」と声をかける
老人は聞き間違えて
「ええ、いい日ですね、本当に」と応える
いい日にいい老人といい犬が
一枚の晩秋の絵となって
額の中に収まる