友 情
昔島だったというその場所は
今は島よりも寂しい岬の町で
木曜日の夜に
灯台目指して船は戻る
「光の中に黒い岩が見えるでしょう
ノルウエーから来た巨人が
ここで岩になったと
子供たちは皆聞かされて育つのです」
灯が海を照らしても
海と岩の区別が私にはつかない
海に呑まれた漁師の名前が
小さな石碑に刻んであり
彼は祖父の名前を黙って示した
風の強い夜だった
灯台の灯さえ揺れ
その隙間をぬって
流れ星が飛んで行き
私達はドックの裏を回って彼の家に戻った
彼はこの町の家で扉を閉めて
私は深夜車を飛ばして首都まで戻った
途中で何か白いものがを空を流れて行ったが
それは彼が眠りにつく前に
私に送った挨拶かもしれない