橋の在る町
石灰質の山を二つ三つ越えると
白い煙のような町が現れた
闘牛の発祥の地だというその町は
もう二ヶ月も雨が降っていないので
谷底が乾いていて
干し草のような匂いが漂っていた
「姉の家から橋がとてもよく見えるのです」
案内の男は突然ある家のドアを叩いた
「マリーア、マリーア、アントーニオ」
ドアの上には「神の家」と書いてある
アントニオは崖に突き出したバルコニーに
無言のまま案内した
金粉のような微粒子が真夏の光に舞っていた
石の橋は谷底の匂いを浴びてかすんでいた
「マリーア、マリーア、アントーニオ」
神の家に入るまじないの言葉が反響して
私は旅の終わりを感じると
アントニオにそれを伝えた
アントニオはそれをマリアに伝え
肥ったマリアは熱いコーヒーを持って来て
ここに何日居てもいいと言った