手紙を待っていた 一ヶ月前に出した便りの 返事を待っていた 郵便配達の時刻は分かっているので 庭の花々の手入れをする振りをして 待っていたのだけれど 季節の変わり目に 花々はだんだん姿を消してきて 午後には強い風が吹いた 郵便配達が来る時刻には 川向こうの鳥がいっせいに舞い上がり 飛行機が三十度の角度で 空を線を引くように 南に向かって飛んで行った 郵便配達は今日は 私の顔を一瞬だけ見つめ 「ごめん」と言って ダイレクトメールを一通渡して 風を背にして去って行った