忘れものに呼び止められて 自転車を降りる 風が三十度向きを変える 季節の変わり目
それは 本を返すことでもなく 電話を掛けることでもなく りんごを買うことでもなく もっと心の奥底に刻まれたもの 忘れたくて忘れかけたのに 心に風が当たって思い出した 「自分をなだめた楽な生活と 厳しい新しいスタートと 私よ どちらを取るか決めなさい 私らしく」
風が六十度向きを変え 乗って来た自転車を カタカタ鳴らした