前夜の雑踏の音はとうに消え まだ朝靄のかかる前 そっと密やかに路地に咲く 一輪の白い花
花は 人に誉められるためでもなく 目立つためでもなく ただそこに在った
自分では意識しないままに その存在のなんと貴重なこと
街の石畳に曙光が射すころに ふと見つめる瞳 そんなふうに始まる出会いは なんて暖かい予感に満ちたことか