広 場
私は座っている
市民劇場のはす向かい
広場をはさんだ古いカフェ
2階にあるので
石畳の広場を行く人々が
よく見える
人々は7割が私の方に向かい
1割が向こう側に歩き
あとは何をするでもなく
広場にたたずんでいる
何年か前に座った同じ席
ほとんどの人々は背中を向けて歩いていた
耳と口の不自由な画家の
アーフェルカンプのように
私はガラス越しに
黙ってそれを見ていた
それは冬だったからかもしれないし
とても孤独だったからかもしれない
同じガラス越しから見る人々
今は知らない人々の
生きている淡い温かみが
花びらのように
私に飛んでくる
それは私がすっかり
孤独に慣れてしまったからかもしれないし
孤独のなかにも希望があることに
気づいてきたからかもしれない