オフィスは運河を二つ越えた先の 湾に面した埋立地に在った 湾をまたいで対岸まで 白く美しい橋が掛かり 車が永久に戻らない巡礼のように 長く遠く走っていた
「では、これからよろしく」 青く深い海のような声を聞きながら 私は契約書に署名した
こうして私の 新しい会社の生活が始まった 朝に立ち上る霧のように 私はひそやかに オフィスを漂い始めた