マヌエルの家
暮れるのも遅いので日の出も遅く7時を過ぎてやっと空が明るなってくる。
スペインの朝食はシンプルなので、パンとコーヒーと牛乳、それにハムやチーズなどと一緒に済ませるだけなのだが、「量が少ねぇ」なんて言っていたのははるか昔のことで、今や大ご馳走となり、太陽が見え始めてくる8時頃に「いただきます〜」。
最後に見た14年前の彼の暗室はまだ工事中だったので、その完成した暗室を拝見した。
私のようなお座敷暗室ではなく、ちゃんとした暗室を自分で作り上げていて、不器用なスペイン人という先入観を捨てなければならないくらいだ。
暗室用品などは聞いた事のないメーカーのも少なくないのだが、聞けばヨーロッパではまだいろいろと中古は出回っているようである。それでもスペインでの入手は難しいがスイスとかならまだ大丈夫なようで、例えばスペインの友人に頼まれてスイスで中古の引伸機を入手し、それを車に積んでスペインまで持ってくるというやつで、昼過ぎにその友人が引き取りにやってきた。
もっともマヌエルの写真は4×5からなので引伸機もオメガかダーストかベセラーなので大仏のようにデカく、唯一のラッキー90Mが小さなお地蔵さんに見えた。
やってきたその友達は40代ぐらいの夫婦で、聞けば夫婦の趣味が暗室までやる写真だそうで、一緒にやる趣味ってなかなか良いね。夫婦円満のコツかもしれない。
しかし、てっきりダンナの方かと思ったら、カミさんが4×5を始めたいとのことでびっくり。おまけに持ってきたスタジオタイプの4×5カメラの使い方のレクチャーをマヌエルから受けていた。すげーな。
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オメガ使いの夫婦と |
写真に興味を持つ女性は少なくないが、そのカメラが大判で、かつ引き伸ばしまでもやりたいという日本の女性はまずいないだろう。男性だってそうは見かけない。重たいとか面倒くさいとか思わないのだろうかスペイン人、これら趣味への取り組み方の姿勢には脱帽で、見習うべきところてんこ盛りだ、と思った。
そのモノクロ用のオメガは72,000円、新品価格の何十万円を考えたら、やはりダークルームは世界的にも先細り状態なのだろう。
使わないガレージには数台の大型引伸機が鎮座しまくっていて、近い将来、グラナダにある芸術専門学校の分校としてダークルーム教室をここで始めたいとマヌエルが言っていた。
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リビングにて |
マヌエルの家に来て2日目の早朝、階段から滑って数段落ち、それなりに尾てい骨を打ったのでケツが痛い。しばし動けなくなったが以前の同様なほど長くはなかった、と思いたい。スペインの家は台湾と同様に石でできていて、日本のスリッパを履いて降りたので滑ってドドドッ。幸い手すりがあったので最悪一歩で止まった。日本のスリッパは機内では良いが住宅内では底が凹凸になっているゴム製のサンダルがベストだ。痛みをもってまた一つ学んだ。
とりあえずネットで「尾てい骨 ヒビ」で検索してみると、あれま、基本的に治療方法はなく自然治癒&安静で2週間ぐらいかかるとあった。骨折だと数ヶ月。幸いに痛風用の痛み止め&炎症緩和の薬をわんさか持ってきたので、一錠服飲。
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リビングにて |
幾つか症状があり、該当するのは立ったり座ったりする時で、いずれも激痛とあるがそこまでではないので、かつ痛みは続いているので炎症ではないが骨折でもなくヒビである、と願いたいところだ。ただ私の場合、痛風の最大発作時と比較しているので、果たして自身の痛みと記されている激痛とが同等なのかどうかの区別がつかない。
しかし病院へ行っても取り立てての治療法はないので、とにかく安静かな、と思っていたらマヌエルが洗濯と掃除が終わったら山へ写真を撮りに行こう、と言ってきた。え、山道を車で?
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マヌエル邸からの夕景 |
どうも一人旅だとこういうオマヌケな怪我がたまにある。迷惑をかける同伴者がいないのは幸いだけど、寝ぼけてベッドから落ちて歯をぶつけてしまい歯科医へ行った数年前の台湾台中でのことを思い出した。
動作によってケツが痛いけど、なすがままということで無理をしない日常生活を送れば良いと判断するが、痛風での足や膝の痛みが治まったと思ったら今度はケツですか、まさに「一痛去ってまた一痛」だ。
湿布で冷やした24時間後は温めると良いとあったので、じゃぁ酒で温めるか・・んな訳がない。
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